パイロフィライト 葉蝋石 PYROPHYLLITE

パイロフィライト 葉蝋石 PYROPHYLLITE Tres Cerritos Mariposa County California
PYROPHYLLITE Tres Cerritos Mariposa County California

家庭科の時間に生地に印をつける白やピンクや青い色のチャコ(チャコペンシル)。
それがこの葉蝋石(ようろうせき)です。
とても柔らかく彫刻しやすいため像や飾り物に利用されるほか、化粧品や塗料、ゴム等たくさんのものに利用されています。
爪で簡単に傷がつく硬さのため、取り扱いには十分気をつけてください。

名前の由来

葉蝋石は火にかざすと薄く剥がれ、葉っぱ→葉片状に広がります。
英名は火と葉っぱを意味するギリシャ語に由来します。
和名はこの葉っぱと、表面の触りごこちがロウのようだからなのかなと思います。

産出地 産状

結晶の形は板状で、これが放射状や層状などに重なった集合体となりその塊として産出されます。
アルミニウムが多くある変成岩に見られます。
また、熱水鉱脈中で雲母や石英とともに生成される場合もあります。

アメリカ・カナダ・ロシア・イタリア・スイス・ブラジル・南アフリカ等、そして日本。
構内の産地は長崎や広島や岡山などでかつて採掘されていました。

層状珪酸塩鉱物 フィロ珪酸塩鉱物

白雲母 千枚はがし Muscovite
白雲母 千枚はがし

雲母と聞いて思い浮かぶと思いますが薄く剥がれるというキーワード。

千枚はがしの異名を取る鉱物ですね。
珪酸塩鉱物の中のそのまた分類で、葉蝋石も雲母もフィロ珪酸塩ですが、このフィロは”葉”というギリシャ語Phyllumに由来しています。
そして層状珪酸塩とも呼ばれます。

この層という部分の構造を考えてみます。

底の形が三角形になる三角錐を想像してください。
角頂点の位置に酸素原子が存在(計4つ)し、ケイ素原子が真ん中に一つの四面体。
これを一つのブロックとして考えます。

ブロックの4つの頂点のうち3つの頂点を他のブロックと共有して組み合わさり平面的に広がって層(シート)が出来上がります。

珪酸塩の層は基本的に金属元素の層と、このブロック層とのミルフィーユ構造をしています。
共有していない頂点(酸素原子)は金属の層をみんな良い子で向いていている状態です。
そのため、珪酸塩層同士の結合力は弱くなっています。

ちなみに…
葉蝋石の場合、サンドイッチを思い浮かべてください。
アルミニウムの八面体の層をサンドイッチの具、パンはブロックが作り出す層。
このサンドイッチがズラリ並んでいる構造が葉蝋石です。
パンとパンが隣り合っている部分の結合力はとても弱いです。

よって、フィロ珪酸塩鉱物の特徴として

  • 晶癖 板状や葉片状
  • へき開 一方向に完全

という共通性があります。
更に、柔らかく弾力性があり、密度が低いということもあります。

基礎データ

  • 化学組成 珪酸塩鉱物 Al2Si4O10(OH)2
  • 色 無色 白色 淡い青 緑色
  • 条痕 白色
  • 結晶系 単斜晶系 三斜晶系
  • へき開 完全
  • 硬度 1-2
  • 比重 2.65-2.90