コバルト華 エリスライト Erythrite
Erythrite Bou Azzer, Morocco |
エリスライトの名前の由来は、ギリシャ語の”erythro-”=赤という意味合いからだそうです。
形状は針状のものや、柱状・皮殻状・粒状・腎臓状等があります。
水晶など、伸びる方向と90°の関係で条線がでますが、コバルト華の柱状の形のものは伸びる方向に条線がでます。
非常に柔らかい石で、硬度は1.5~2.5。
指の爪で何とか傷をつけることができる程度の硬さです。
ヒ素との関係
この石は、ヒ酸塩鉱物という石の分類に属します。
ヒ(砒)素と酸素が結びついてヒ酸(酸化する)となり、ヒ酸イオンが他の元素と結びつくことによってヒ酸塩鉱物となります。
ヒ素といえばけっこう有名ですよね。
”毒”として使用される話が多いものです。
食事にもって暗殺を…という話や、和歌山毒物カレー事件がありました。
四谷怪談のお岩さんはヒ素化合物が原因で、亜ヒ酸を盛られたとのこと。
亜ヒ酸は無味無臭で食事に入っていても気づかないとのことです。
毒以外には半導体や赤色発光ダイオード等で使われています。
コバルト
”コバルトブルー”と聞いたことがあると思いますが、青いイメージが強いと思います。
このコバルト華は立派なピンク色。
クッキーなどお菓子の乾燥剤で、青いツブツブが湿気を含むと赤い色に変わるものがあると思いますが、この青い色は”塩化コバルト”。
この塩化コバルトは湿気を含むとピンク色に色が変わります。
つまり”水”があるとピンク色になります。
コバルト華の化学式はCo3(AsO4)2・8H2O
Coはコバルト
Asはヒ素
H2Oはご存知”水”です。
ガンマ線~コバルト60
コバルト60はガンマ線照射に使われる人工放射性元素です。
照射してもエネルギーが弱く、あてたものに放射線が残る心配はない言われています。
このコバルト60、石が好きな方は聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか?
水晶の色の変化を目的とした照射処理(放射線を照射して色を変えること)に使われているのは、このコバルト60です。
大地の精霊・地の精霊・地下の古鬼-コバルト
鉱山で採取や冶金※1がうまくいかなかったりした時、鉱夫たちは大地の精霊・地の精霊・地下の古鬼のせいだと言っていたそうです。
コバルトは鉱石としてあまり利用価値がなく、掘り進めてコバルトが出てくると”小人にいたずらされた!”的な表現として、精霊や古鬼に例えていたようです。
これがそのまま元素としてのコバルトの名前の由来となったようです。
現在、コバルトは顔料、PCのハードディスクの磁気ヘッド等、多方面に使用されています。※冶金(ヤキン)鉱石等より有用な金属を取り出し加工すること。
産状 産出地
コバルト華の産地は、コバルト・ニッケルを含む鉱床の酸化帯です。
コバルトを含む石がたくさんあるところの表面には雨も振って日照りもあり、風などの作用もあります。
そうした中で要は”野ざらし”になっている部分にできる二次鉱物です。
ピンクのこの色は、コバルト・ニッケル鉱床を探すときの目印とされています。
国内でも採取されます。
ニッケル華とコバルト華
コバルト華の共生鉱物の一つにニッケル華があります。
化学式
- コバルト華 Co3(AsO4)2・8H2O
- ニッケル華 Ni3(AsO4)2・8H2O
コバルトとニッケルが入れ替わったものです。
コバルト華が赤紫~ピンク色に対し、ニッケル華はきれいな緑色。
ともにとても色合いの美しいものです。
ニッケルは、100円玉と50円玉に合金として使用されています。
ニッケル+チタンで形状記憶合金となります。
また、充電して使用できるエコな乾電池”ニッケル水素電池”の原料にもなっています。
また、ニッケルの割合が多いとニッケル華、コバルトの割合が多いとコバルト華となり、固溶体※1の関係です。
※固溶体
固溶体とは、2つ以上の元素が融け合って混じり合い均一になっているものをいいます。固溶体で代表的なものはガラスです。また鉱物では、翡翠やラピスラズリも固溶体の鉱物です。
基礎データ
コバルト華 エリスライト erythrite Bou Azzer, Morocco |
- 化学組成 ヒ酸塩鉱物 (テクト珪酸塩鉱物) Co3(AsO4)2・8H2O
- 色 赤紫~ピンク色等
- 条痕 薄い赤
- 結晶系 単斜晶系
- へき開 完全
- 硬度 1.5~2.5
- 比重 3.1