桜石 -菫青石仮晶-

桜石-菫青石仮晶- 京都府亀岡市湯の花
桜石-菫青石仮晶- 京都府亀岡市湯の花
桜石とは菫青石(英名cordierite コーディアライト)の仮晶のことです。
ではまず菫青石から見てみます。

菫青石 cordierite

cordierite iolite
cordierite iolite
青~すみれ色(菫色) 菫青石という和名はその見た目からなのでしょう。
英名のコーディアライトはフランスの地質学者ルイ・コルディエ(Pierre Louis Antoine Cordier 1777 – 1861)。
18世紀末にこの菫青石を紹介したことが由来だそうです。

菫青石の別名

菫青石というとピンと来ない人もいるかともいますが、この菫青石の美しい結晶のものは”アイオライト”・”ウォーターサファイア”と呼ばれています。
アイオライトと言われれば、ピンとくることでしょう。
そしてこの菫青石は多色性
多色性とは角度によって色が違って見えることを言います。

菫青石は、”ダイクロアイト”の別名も持っていますが、由来は”ダイクロイズム=二色性”。
また、鉄分(レピドクロサイト ヘマタイト等)等を含むものがあり、赤みが強いものを特別に”ブラッドショット・アイオライト”と呼んでいます。

この菫青石は特に多色性がはっきりしているため、カットの際にきっちりとわかるようカットしてあるものがあります。

菫青石の産出地

スリランカ・ミャンマー・インドなどから多色性の強い美しいものが産出されます。
アメリカ・ブラジル・ドイツ・ノルウェーなどからも産出されます。
そして日本もです。
有名なのは茨城県日立鉱山、宮城県川崎町があります。

菫青石の産状

です。
※1 泥質ホルンフェルス
ホルンフェルスとは、割れ目に入りこんだマグマの熱とその圧によって、そのまわりの石が変化した変成岩(接触変成岩)の一つです。
ホルンフェルスの分類法で、源岩がなにかという分類法がありますが、泥岩が源岩の場合は泥質ホルンフェルスという名前となります。

菫青石の基礎データ

  • 化学組成 珪酸塩鉱物   Mg2Al4Si5O18 
  • 色 濃青 灰青 すみれ色
  • 条痕 白色
  • 結晶系 斜方晶系
  • へき開 明瞭
  • 硬度 7~7.5
  • 比重 2.5~2.7

桜石

桜石-菫青石仮晶- 京都府亀岡市湯の花
桜石-菫青石仮晶- 京都府亀岡市湯の花
国指定天然記念物で、京都府のレッドデータブックに掲載されています。
花のような形をしたかわいい外観です。
花の部分の大きさはみな5ミリ~1センチ程です。
写真のものは母岩についたものですが、この花の部分だけを取り出すことも可能で、金太郎飴を思い出していただくとわかりやすいかもしれません。
どこから切っても桜模様、全体は細い棒状です。

桜の花びらは5枚ですがこちらは6枚。
貫入(透入)双晶と呼ばれる双晶で、二つの結晶の一部分が、お互いの結晶の中に入り込んだものを言いますが、この場合、3連貫入双晶となります。

菫青石のところで泥質ホルンフェルスに触れましたが、このホルンフェルスの分類法で、岩石に含まれている主要な鉱物による分類法もあり、この場合”菫青石ホルンフェルス”という名前となります。
泥岩を源岩とした菫青石を含むホルンフェルスでこの桜石は見られます。

その形と成因

菫青石仮晶=桜石とは、菫青石がその形を残したままピニ雲母(ピナイト-Pinite-ピニ石)に置き換わったものです。

と、つらっと書きましたが…菫青石の基礎データで、晶系は斜方晶系とあります。
桜石の形、六角形っぽいですよね。
なぜ?と考えた時…桜石の桜の花芯に当たる部分がインド石(-Indialite-インディアライト-六方晶系)で6枚の花びらの部分が菫青石。
この2つの鉱物の成分は同じで、同質異像(多形)です。
同質異像(多形)とは、化学組成が同じで結晶構造が異なるもののことです。
そしてインド石は菫青石より高温で結晶構造が安定します。
桜石のあの形は、インド石が晶出した後、インド石の細長い柱の面に菫青石が成長し育っていったのでは?という考え方が有力とのことです。
そしてこのお花模様は雲母化し、ピニ雲母となったものということになります。

仮晶とは、とある鉱物が結晶した形を残したまま、中身が別の鉱物に置き換わってしまうことをいいます。
この場合、菫青石がピニ雲母になった→置き換わったということになります。
もともと菫青石だったので元の鉱物名+仮晶(もしくは仮像)と表します。

桜石の形と成因については諸説あるようで、インド石説を否定する論文なども存在します。
調べた範囲の中で一番有力とされているものを掲載しました。

桜石の言い伝え

京都府のひえ田野柿花を地図で見ると、”積善寺”と”桜天満宮”そしてその下の方に”湯の花温泉”があります。
こちらが桜石の言い伝えの舞台です。

積善寺と桜天満宮と菅原道真

学問の神様で有名ですよね。
私は湯島天神でこの名前を初めて目にしたと思います。
桜石といえば、この菅原道真と桜天満宮の話をなしには終われません。
ざっと菅原道真の話をしますと…
祖父の代から文章博士の家柄に生まれたサラブレット。
自身も文章博士となり大出世となるが、ライバル藤原時平の策略で太宰府に左遷。
悔しさの中でこの左遷から二年後に逝去。
その後…
左遷に関わった人物が次々と死去し、あの有名な怨霊伝説が生まれます。
ですが怨霊から神様となった、ちょっと不思議な人です。
さてそれでは、言い伝えの内容です。
道真が左遷された頃、ひえ田野出身の高田正期(タカダマサトキ)という忠義な近臣がいた。
道真はこの忠義さ故に正期にとても目をかけており、自身が左遷の折に桜の木を正期に与えた。
正期はこの桜の木を故郷のひえ田野に植えた。
翌年はとても綺麗な花が咲いたが、その翌年は全く花は咲かず、葉ばかりとなった。
このことで道真に何かあったのではと不安に思い、正期は太宰府へ向かった。
道真はこの話を正期から聞きとても感動し、天拝山(テンパイザン)の土で自身の像を作り持ち帰らせた。
正期はこれを独鈷抛山(トコナゲヤマ)の麓に祠を作って祀った。
そして正期の死後、桜は枯れてしまった。
それから300年。
積善寺の住職の枕元に、道真が夜毎に立った。
なんだろう?と考え、そうだ!と思い当たり、独鈷抛山の麓の祠を寺の境内に移動した。
それは、あの桜の木が植えられていた場所。
すると桜の形をした石が桜の木が植わっていたまわりの石から浮かび上がってきた。
祠は桜天満宮と呼ばれるようになった。
※ 文章博士 国の官僚を養成する大学の寮で漢文・中国史を教える教官
※ 桜天満宮での桜石採集は不可。

湯の花温泉と鬼の涙

上記の話とはまた違った内容の言い伝えがあります。
昔々、ひえ田野に悪さばかりしている鬼がいた。
ある日、行者がこの地を通りかかり鬼退治をすることになった。
祈祷を続けた後、桜の木に雷が落ち、その根本に桜の模様が浮かび上がっている石が出てきた。
その石を鬼に向かって投げると山が2つに割れて鬼はその割れ目に落ちていった。
その後、山から湯気を立ててたくさんのお湯が溢れだした。
これが湯の花温泉となった。
この湯は、鬼の涙と言われている。
言い伝えなので微妙に違う部分もあるかと思います。
鬼に向かって投げる→節分の豆まきとなったとの話もあります。
日本の和を感じさせる言い伝えと思います。
そして、以上のような言い伝えから、昔よりお守りとして身につけていたそうです。

やっぱりSAKURA ISHI

桜石-菫青石仮晶- 京都府亀岡市湯の花
桜石-菫青石仮晶- 京都府亀岡市湯の花
この記事を書くにあたって海外の桜石の紹介記事もだいぶ調べました。
桜石の英名は、
  • Cerasite-セラサイト
  • Cherry blossom stones-チェリーブロッサムストーン
との記載を見かけました。
Cherry blossom stones-チェリーブロッサムストーンと書かれている方が圧倒多数!
Cerasite-セラサイトはCerasus→”サクラ属”由来とのことです。
チェリーブロッサム 桜の花。
日本人にとって桜は格別なもの。
日本の桜が海外でも特別なものと認識されているのだなと思うような記事もあり、とても嬉しくなりました。
でもやっぱりこの石の名前は…
SAKURA ISHI-桜石
これがやっぱり一番!と思うのは私だけではないと思います。

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