クンツァイト kunzite

クンツァイト Kunzite Pakistan
Kunzite Pakistan

薄い紫色のこの石。
とても綺麗で見ているとずっと見てしまいます。
リシア輝石の中で薄い紫・ピンク色のものをクンツァイトと呼びます。

リシア輝石とは

灰色や白もしくは少し黄色味がかったものが、1877年ブラジルで発見。
英語でspodumene/スポジューメンといいますが、この名前の由来は、

”灰燼に帰す(かいじんにきす)”
=跡形もなくすっかり焼けてしまう。灰燼と化すという意味

という意味のギリシャ語”spodumenos”からとのこと。
試験管に入れて加熱すると灰色の塊ができることからだそうです。

その後、薄いピンク色・薄い紫のものと緑色のものも同じリシア輝石と判明。
薄いピンク色・薄い紫色のものはクンツァイト、緑色のものはヒッデナイト (hiddenite)です。
そして同じリシア輝石で、無色、黄色(トリフェーン)のものもあります。

宝石質のリシア輝石の特徴は多色性
その石を見る角度で色が違って見えることを言います。
この石をカットしてルースにする際、この多色性を考えてカットします。

硬度は6.5~7。
比較的硬いのでは?と思うと思いますが、へき開が完全で壊れやすく、日光で退色する性質があります。
リシア輝石のルースを使ったアクセサリー等、取り扱いに注意です。

クンツァイト Kunzite Pakistan
Kunzite Pakistan

写真を見ていただくと解ると思いますが、縦に条線があり長い柱の形をしています。
この柱、大きなもので14メートルにも及ぶほど大きなものがアメリカのサウスダコタ州で発見されていますが、宝石質のものはこんなに大きなものはありません。
宝石質でないリシア輝石は、リチウムの資源として採掘されます。

リシア輝石は、LiAlSi2O6
リチウムとアルミニウムの珪酸塩でできていて、分類としてはケイ酸塩鉱物のイノ珪酸塩となります。
リチウムとは、よく聞くところでリチウム電池がありますね。
他には躁鬱病の薬(炭酸リチウム)にも使われています。

クンツァイトとは

クンツァイト Kunzite Pakistan
Kunzite Pakistan

さて、話をクンツァイトに戻します。
このクンツァイトという名前は、透明感のある薄いピンク・薄い紫色のリシア輝石の宝石質のものに付けられます。
宝石学者のジョージ・フレデリック・クンツ(1856~1932 米)にちなんで名付けられました。
この発色の原因はマンガンが発色原因。
マンガンが多ければ多いほど色合いが濃くなりますが、あまりに濃くなると透明感がなくなります。
マンガン乾電池(昔からある乾電池)という名前を聞いたことがあると思います。
リチウムとマンガン、乾電池繋がりですね。

そして、赤色の炎色反応があり、全部ではありませんが紫外線ランプで黄色やオレンジ色になる物があるそうです。

産地ですが、パキスタン・アフガニスタン・マダガスカル・ブラジル・アメリカカリフォルニア州があります。
リシア輝石としての産地は世界中にかなり多いのですが、クンツァイトの産地としてはこのあたりです。
日本でもリシア輝石は産します(茨城県妙見山)が、クンツァイトは見つかっていません。

クンツァイトにまつわる補足と疑問

今回クンツァイトを調べていて、文献によって微妙に違うものがありました。
一つ目は結晶の大きさ。
14メートルもの大きさのものが~と書きましたが、とある文献では…

長さ14メートル・重さ90トン・サウスダコタ州にて発見。

またとある文献では…

最大の標本は記録上重さが90トン(長さの記載なし)
現存している最大級クラスの大きさで、長さ14メートル・幅80センチ・重さ28トン

と書かれていました。
微妙にごちゃまぜになっている感がしたので、あえて14メートルとだけ書かせていただきました。

二つ目は発見の年数

リシア輝石が発見されたのはブラジルで1877年。
その後の1879年にクンツァイト(ピンクの物)とヒッデナイト(緑の物)がリシア輝石だと判明

とあります。
が、他の文献には…

1902年、アメリカのカリフォルニア州にて最初に発見されたためカリフォルニアアイリスとも言われる。

いくつかの文献を比較すると、1879年説と1902年説と争っております^^;
そのなかで1つの文献は、

リシア輝石の所に1879年説が掲載され、クンツァイトの所に1902年説

が掲載されていました。
どういういきさつがあるのか?
単純な間違いとは考えにくいと私は思います。
クンツァイトという名称がピンクのリシア輝石の標準として定められたのが遅かったリ、産地である国同士が別々にその石の発見等を知ったり、何かの理由がそこにありそうです。
そして、リシア輝石の名前ですが、リチア輝石と表記してあるものもあります。
間違いではありません。

リシア輝石の仲間ですが、

  • ヒッデナイト(緑)
  • クンツァイト(ピンク)
  • クリアー(無色)
  • トリフェ-ン (黄色)

などがあります。
全てリシア輝石の仲間なので、リシア輝石=スポジュメンをおしりにつけて、”イエロースポジュメン”等と色と組み合わせて呼ぶ名前もあります。
多分一番一般的に聞き慣れている名称は、クンツァイトなのでしょうか。
イエロークンツァイトとか、グリーンクンツァイトという表記を見かけますが どうなんでしょう。
クンツァイトはそもそもスポジュメンの亜種。
名前だけが色々増えて、分かりにくくなる気がします。
とある文献には、クンツァイトの欄に、ヒッデナイトが色違いとして掲載されていました。
クンツァイトの色違いがヒッデナイトで、リシア輝石(スポジュメン)は別物?と勘違いしやすいかもと思います。
この記事は、なかなか手ごわかった(笑)